「……とりあえず方法としては、一撃でアイツを倒すか、アイツの反撃を食らわないように何度も攻撃するかの二択しかない……か」

 顎に手を当てながら、思わず出た呟き。それは周が、心の中だけで考えられる範疇を超えているということ。頭で出した答えを口に出し、随時脳に補填していかないと、脳の処理が追いつかないということ。

 短絡的に言うと、必死なのだ。

 方法はあるのに――どうすれば良いのかはわかっているのに……手段が無い。彼が考えつく限りでは。

「前者はまず手段が無い。そんな夢の様な手段が無い。後者はまず方法が無い。全てが一つになろうとしているアイツらの攻撃を避けれるほどの瞬発力が――」
(俺がいるだろ?)

 それは、自分の中からの声。

「周にぃ?! いつから?!」

 周囲をまったく気にせず大きな声を上げてしまう。

 でもそれは、当然なのかもしれない。だって彼はさっきまで、気絶していたはずなのだから。

(さっき。周が見下ろして、何か考えごとをしてる時かな。……それでさっきの話だが、俺ならその速度を超えることが出来るんじゃねぇのか?)

 周にぃの言葉に、その根拠は? と聞こうとして、思い止まる。

 ……そう、確かに彼ならばいけるのだ。

 藍島冬子では無理。……ましてや周でも無理なその攻撃を避ける術……と言うより速度が、彼には存在している。

 

 いくら複数の意思が“意志”を統合しようとしている最中の最大攻撃であろうとも、肉体の“枷”は外れていない。

 よって両方が外れている彼ならば、避けることは大いに可能なのだ。

 

 ……もっとも“記憶”と“記録”の違いが伝わっていない周に、そのことはわからない。

 でも……向こうが悪霊の一種であるうちは、周にぃの速度に勝てる訳がないと、何故か周は思えた。

 根拠なんて全く無い。強いて上げれば今までの戦闘において、周にぃが悪霊相手に速度で負けているところを、一度も見たことが無いぐらいだろうか。今までの奴とは桁違いの強さはあるが……それでも、周にぃがコイツに速さで負けるところが、まったく想像出来なかった。

 でも……肝心の攻撃手段が無い。

(どういう状況かは詳しくわかんねぇが、周は何かを殺したいんだろ? しかもダメージを食らわずに。それだったら俺に任せれば良い。……つっても、俺じゃあ霊の類は見れねぇからな。全部の指示は周に任せるぜ)

 任せようにも……彼には何も見えない……故に、攻撃は届かない。清めの武器を冬子に借りようとも。

 ……だっていくら清めの武器を振り回しても、周にぃ自身にあの悪霊が見えないのならどうしようも出来ない。認識できてこそ――世界に存在していると脳が理解してこそ、ようやく霊体に攻撃を当てることが出来るのだから。……男の子の中に入っている時なら、肉体を介して清めをぶつけることが出来るから効果があったのだが……。

 その事実に周にぃは気付いていない。……いや、周が教えていないので、正確には知らないのだろう。だからそのことを周にぃに教えてやろうと、周は口を開く。

「でも周にぃには何も見えないだろ? だから例え清めの武器でも――」

 ダメージを与えられないんだよ。そう繋がるはずの言葉は、己の閃きによって断ち切られた。

 自分自身の考えに驚愕しているのか、その表情は驚きに塗り固められ、言葉を続けようとした口は開きっぱなしだ。

(どうした? 清めの武器自体を冬子に借りて、俺の中にいるお前に敵の場所を教えてもらって、後は俺がその場所を斬ればそれで済むんじゃねぇのか?)
「……残念だけど、清めの武器を振るう本人が、悪霊の存在を視覚して認識してないと意味が無いんだ」
(何……? そうなのか?)
「そうなんだ。……でも、良い方法を思いついた」

 思わず顔がニヤけてしまう程の名案が。

 そう言わんばかりに、周の口はうれしそうな笑みを浮かべていた。抜け出さなかった迷路を抜け出せたような、長年解けなかったパズルが解けたような……そんな、会心の笑み。

「赤城君」

 と、閃いた名案から、アイツを倒すための手順を考え出した周に、冬子が声をかけてきた。

「周二が復活したの?」
「あ、うん。気絶から回復した。何なら、表に出そうか?」

 周にぃを心配するような冬子の言葉に、周はそう提案する。

 だって後残っていることは、アイツを消すための手順を練るだけ。しかも極力早く。

 だから別に、周が表に居続ける必要もない。中に篭り、集中して考えるのも一つの手。

 そんな周の気を利かした提案に冬子は「いいわ。それより」と言葉を続ける。

「さっきあなたが呟いた、一撃であの物体を倒すという手段……私なら実行できる」
「……何?」
「あなたには説明していないけど、私のこの短剣は本来、陣を描くためにある」

 と、美喜が投げつけ、少年だった頃の悪霊が力で無理矢理抜き落としたT字型の短剣、その内の一本を拾い上げる。

「陣?」
「そう。この短剣で相手を無理矢理壁に押さえつけるのは“拘束力場”の拘束の効果。残りの“力場”の効果は、空気抵抗その他諸々を無視して、目標地点に正確に飛ばすため。それで肝心の陣だけど、私が知っている陣の中に、相手の抵抗力を無力化するものがある」
「抵抗力?」
「言うならば殻のようなもの。もしこの陣を描いた中で清めの効力がある武器を用いたなら、全身に清めの効果を与えることが出来る」
「なるほど……つまり、相手の守り全てを強制解除させるようなものか」
「そういうこと。もっとも欠点もある」
「……中に入っている人全員に効果が及ぶ……故に、攻撃側も巻き添えを食らうと言うことか……」
「そういうこと。しかも大地にまで効果が及ぶし、物理的にも効果が及ぶ。もし外して地面に突き刺してしまえば、生半可な力では抜けなくなる」
「あくまで、力が増幅するわけではないから……か」
「話が早くて助かる」
「……それを仕掛ける時間はどれぐらい?」
「陣自体はすぐに出来上がる。でも効果を発動させるための呪文を唱えるのに時間がかかる。しかもその間にアレに動かれたら、仕掛けた陣の頂点をまたズラさないといけないので最初からになってしまう」
「……つまり、早く効果を発動して欲しかったら、アイツの足止めをお願いするってことだな」
「そういうこと」

 幸いにも、ここに転がっている短剣は六本。頼めばすぐにでもやってくれるだろう。

 ならば……やってもらうしかない。

 チマチマとしたダメージだけでも全然良いのだが……それよりも効率的だ。何よりソレは……大いなる切り札となる。

 

 その点も踏まえ、周は作戦を組み上げた。

 ……おそらく完璧な。

 今行える中で、一番成功率の高い作戦を。

「よしっ! それじゃあ皆、お願いがある」
「なに?」
(ん?)
(よしきたっ!)

 三人がそれぞれ返事をしたのを確認後、周は自らの作戦を話した。

 

 

 

 冬子だけでも十分……そんな気はするのだが、この男の子は協力を申し出た。

(頼む! ボクにも何か、手伝わせてくれっ!)

 ソレは周に向けられての言葉。

(アレはボク自身が作ってしまったものだ。だから……自分のことぐらい、自分で責任を取りたい!)

 友人に向けての、自分の後始末を自分でさせてくれ、と言う願いの言葉。

(正直今のボクには、さっきまでの力はない。……だがも何か、役に立ちたいんだ!)

 その言葉を受けた周は、悩んだ。

 何故なら彼が立てた作戦には、男の子の数が入っていなかったから。……いや、正直な話、周はこの男の子の存在を忘れていた。目の前の大きな存在のせいで。

 でも……自分の後始末ぐらい自分でしたいと、そう言うのなら――

「……わかった。それじゃあ、この人について行って」

 ――その気持ちを汲み取るのが、友人と言うもの。

「彼女には君の姿が見えている。話したいと思い合えば会話も出来る。だから彼女を、手伝って欲しい」

 一番時間が掛かるであろう冬子に彼を差し向けたのは正解かもしれない。

 ……確かに、冬子一人でも十分だっただろう。

 でも、この子がいることで時間が短縮されることに間違いはなかった。……ソレに何より、周のポジションは彼では手伝えそうにないし、美喜のポジションには他の存在自体が不要である。

「それじゃあ君は、あの下に落ちている短剣二本を拾ってきて、あの奥の住宅の屋上にある避雷針の近くと、あっちの最上階の角に刺してきてもらえる?」
(わかった!)

 そう元気に返事をすると、男の子は躊躇いもせず短剣の群れへと飛び降りた。

 

 冬子が現在地は、先程の住宅の屋上。掛かっている鍵を短剣を使ってこじ開け上ってきた。ここからの方が陣を作りやすいから。

 だが今となっては、少しだけ後悔している。小さくなっていっている例の対象が、少しだけ見えにくい。

 

 すぐ真下が陣の中心になるよう、冬子は拾ってきた短剣で狙いをつけ、投げる。そうして男の子に託した二箇所以外の四箇所を早々に突き刺した。

 男の子はまだ一本も突き刺していない。が……それは仕方が無い。

 だって冬子が男の子に頼んだ場所は、冬子の位置から目標地点までの直線状に障害物が存在し、狙いを定めたからと言って突き刺せる場所ではないからだ。一度この屋上から降りないと狙えない場所……故に、飛んで行ける男の子に頼んだ。

 

 悪霊の頃の名残なのか……それとも浮くのって以外に簡単なのか……。さっき私と合流するために来た美喜ちゃんも浮いてきたし……。……まったく……いつの間に……。

 まぁ、そのことに関しては今は構わない。今重要なのは、この陣の描きを完璧にこなすだけ。

 突き刺してもらう場所は分かっているのだし、後は呪文を唱えるのみ。陣は完成していなくても、呪文は唱えておくことは出来るし。……最も、唱え終わった時に完成してなかったら水の泡だけど……。

「我、地脈の力を借りる者。我、世界に残りし者を葬るもの――」

 パンッ! と勢いよく手を叩き合わせ、祈る形にしながら唱える冬子。

 次いで、手の平を地に向けるように両手を縦に重ね――

「――其の盟約において、世界の力を拝借する者。故に我が望む力を、我を介して具現せよ――」

 ――手の形をそのままに、勢いよく地面へと両手を地に触れさせる。

 

 片膝を立て、両目を瞑り、お経の様なものを唱えだす冬子。

 ……ここから先は、同じ除霊士でないと聞き取れない。

 ……だから後は、唱え終わり、完成するのを待つだけだ。

 

 

 

 だがその間、あの対象が何もしないわけが無い。

 だんだんと縮小していっているその大きさは、すでにこの住宅の三階より少し低いぐらいにまでなっている。しかも……冬子の陣に勘付いているのか、それとも不穏な空気を察しているのか、塊が辺りを見回すようにウロウロしている。

 

 冬子の陣の広さは、六方陣全ての広さではない。三角形の上下設置により現れる中心の六角形の面……それだけの広さしかない。

 しかもあの塊自体が、小さくなっていっているとは言えまだまだ大きいのだから……ウロウロする範囲が少しだけでも広がれば、それだけで陣の範囲からはみ出してしまう。それだけは、避けなければならない。

 

 だからここで、僕達の出番。僕と周にぃが、アイツの足止めをする。

 藍島さんを陣作りに駆り出したのだから、コレが出来るのは僕と周にぃだけだ。

 

(……周、俺が使ってるナイフ、持ってるか?)
「もちろん。ちゃんと気絶から回復した時に拾っておいたよ」

 最初はこのナイフで悪霊だった男の子を倒すつもりだったから当然。

 周にぃの疑問にそう付け足しながら、ズボンと腰に挟んでおいた、折り畳まれていないままのナイフを取り出す周。

(よし……じゃあ、コレを使おう)
「えっ?」
(武器を振るうのは周なんだろ? それだったら、冬子から借りた薙刀なんて振り回せないじゃないか)
「んまぁ、確かに……あんな重いもの、僕一人じゃ振り回せないね」

 それでも借りたのは……寸前まで周にぃに使ってもらうため。でもまさか、このナイフとしては長いけど、武器としては短いコレを使うとは思いもしなかった。

(だろ? それに何より、周の聞いた作戦だと、あの薙刀を切り札として温存しておく方が良いと思うんだけど?)
「確かに……そう出来ることに越したことは無いけど……でもこんなに短かったら、ナイフの部分を当てれるかどうか……」

 霊体と人間のように接することが出来る周としては、実質な武器はその変の小石でも大丈夫。だからこの清められていないナイフでも問題は無いのだが……それでも、あの悪霊を素手で殴るようなヘマだけはしてはいけない。

 正直な話、現象に成ろうとしている悪霊に素手で触れれば、何が起きるか分からない。もしかしたらその瞬間に呪われてしまう可能性だってある。

 拳が砕けるとかはまぁ、周にぃが鍛えてくれてるから問題ないだろうけど……呪いだけは避けないといけない。

 現象からの呪いは、どう足掻いても解けないのだから。

(それだったら……俺に変わってくれ。方法がある)
「え? うん、わかった。……えっとじゃあ、僕と変わってくれ、周にぃ」

 瞬間、表は周にぃになった。

(それで、どうするの?)

 裏になった周がそう問いかけると、周にぃはポケットからナイフを折り畳むための針金を取り出し、「まぁ見てな」と言って、柄の尾から三番目の穴にその針金を突き刺しいじくり出す。

 ……しばらくして、カシャン! という音が響く。

 その音を確認した周にぃは針金を仕舞い、勢いよくナイフを振るう。

 瞬間、ナイフの刀身が伸びた。

(えっ?!)
「こういう仕込み武器なんだよ。これはな」

 驚く周に、得意気に周にぃは説明する。

 

 三十センチの刀身がある折り畳み式のナイフ、と言うことは、柄も約三十センチあるということ。

 つまり全長六十センチ。

 それだけでナイフとしては十分な長さを誇るのに、さらにこの武器には、柄に二十センチの刀身が隠れているのだ。

「最もこの隠れてる部分の刃は砕けなかったからな。基本的に使わねぇんだよ」

 人を殺したくない周にぃにとって、この仕掛けを解放する機会なんてまったくなかった。

 だが今回は相手が悪霊。

 よって人殺しの罪を被る必要は皆無。

 だからこそ、解放した。

(二十センチも伸びて全長約八十センチ……これじゃあもうナイフじゃなくて脇差のレベルだね)
「これだけの長さなら、さすがに大丈夫だろ?」
(……ああ、もちろん)

 周は力強く返事をした。そうしてようやく、周と周にぃの戦いが始まる。

「それじゃあ……いくぞ?」
(いつでも大丈夫)

 下にいる黒い塊を見下ろしながら、周にぃは声をかける。

 周にぃは戦いに慣れているし、この高さから飛び降りるのも慣れている。

 でも周に緊張が無いのは――……ああ、そうか……そもそも彼には、自分の命なんてどうでも良かったんだ。だから緊張が無い。

 飛び降り、着地時の行動に失敗して死のうとも、構わない。あの塊の一撃を浴びて死のうとも、構わない。あの塊の足止めさえ出来れば、それで良いのだ。

 だからこんなにも、冷静でいられる。

 ……もっともそのことは、周にぃも気付いているのだろう。

「周、ヤバくなったら、ちゃんと俺に変われよ」

 だから飛び降りる前に、そう声をかけた。

(……もちろん)

 その周の言葉を合図に、周にぃは手すりに足をかけ、人が点に見えてしまうほど高いこの住宅の十階から、飛び降りた。

 あの小さくなっている……それでもまだ十分に大きいままの、黒い塊目掛けて。

 

 

 

 耳を裂くような風の音。重力に導かれて地へと落ちる浮遊感。

 それらを体感しながらも周にぃは壁を蹴り、さらに躯を加速させる。

 刹那――

「俺はお前に、体を預ける!」

 ――周と入れ替わった。

 迫る黒い塊を見据えながら、手に持った脇差を振るう周。

 体重の移動も腕の振りもむちゃくちゃ。素人が鉄の棒をぶつけただけのその行動。

 でも……それで十分。

 それだけでも傷つけていくことは出来るのだから。

「僕は君と、入れ替わる!」

 攻撃を終えた瞬間、再び周にぃと入れ替わる。

 だがその周にぃの視界には、あの黒い塊の姿は無い。

 ……でも、それで構わなかった。

(周にぃ! さっき僕が殴った箇所から八メートル程離れて! そして上を駆け登って六階付近で再び下降!)
「OK!」

 十階から落ちた衝撃を四肢を使って逃がしきる。瞬間、周に言われた通り彼が殴った箇所から八メートル分一息で離れ、壁を蹴って重力無視の上昇。六階に辿り着いたら中に身体を忍び込ませ、再び先程落ちた場所から落ちる。

「俺はお前に、体を預ける!」

 だが今度は、落ちると同時に周と入れ替わる。そうして周の視界に映ったのは、先程の衝撃が何なのか探るかのように、周囲をキョロキョロとする“目”。

 ……それはいつの間に生まれたのか。

 黒い塊の表面を覆いつくさんばかりに、大きな目玉が無数に浮かび上がっていた。人間の目を切り抜き、大きくしたかのような、そのグロテスクな瞳。

 さっき攻撃をする前までなかったソレは、ギョロリと、周の姿を捕捉する。

 目が合った……! だがソレが何だ! そう言わんばかりの気迫。そして行動。

 周はその眼球に狙いを定め、脇差を振り下ろした!

「僕は君に、身体を託す!」

 塊の真ん中にあったため、離れるために体制が崩れてしまった。

 でも構わず、周と入れ替わる。

 先程と変わらず、特に痛みを感じたような声を発しない黒い塊。おそらく、グロテスクな眼の形はしているものの、その眼は先程までと何ら変わらないのだろう。人間の目の様に弱点という訳ではない、ということ。

(周にぃ! たぶん向こうに姿を見られた! 同じ場所から上がったら格好の的だから、向かいの住宅から上に登って!)
「合点承知!」

 そして再び、黒い塊が見えない周にぃに指示。ソレを聞きながら体勢を立て直し、着地と同時に次の目標地点目掛け、最速の疾さ(はやさ)でそちらへと駆け出す。

 

 ……これこそが、周が思いついた会心の方法。

 塊への接近と攻撃後の体制制御。それら全てを周にぃが引き受け、塊への攻撃と次に移動するべき場所を周が引き受ける。

 そうすることで、周にぃでも霊体にダメージを与えることが出来、周でも人外の身体能力を扱うことが出来るのだ。

 

 そうして周にぃは向かいの住宅の上へと辿り着くと、建物の中へと身体を忍び込ませず、壁を垂直に蹴って塊へと迫る。

 そして――

「俺はお前に、体を預ける!」

 ――周と入れ替わる。

 彼らの姿を見失い、例の眼全てをキョロキョロとしているその塊に向かって周は、落ちながらも塊の頭上を通過する時に、握っている脇差を勢いよく振り下ろした!

「僕は君に、全てを託す!」

 そしてまた、入れ替わる。

 体重の移動が上手くいっていない攻撃をしたせいで、ツンのめり、体勢を大きく崩しているにも関わらず、周にぃはその崩れた体勢を空中で制御。脇差を握りながらも木の枝に掴まり、壁を蹴った際の威力を少しだけ殺し、前の地面に着地。

 その間にも周は、次の移動場所を周にぃに指示していた。

 ……本当に完璧な、役割分担。

 例の塊も移動していないところから答えは明白だが、この二人は完璧な足止めを行っていた。

 完璧な連携を――信頼関係として築き上げたソレを以ってして。

 

 

 

あとがき:
とうとう戦いが始まる話ー
まさに最終決戦ですよ
本当の本当に、この戦いで最後

故にあとがきとしてかくこともまったく無くて……
まぁ、今回はこの辺で
おそらく後三話で終わると思いますので、もうしばらくお付き合いください