(おい周。先生が来たぞ)

 心の中からの声で、意識が覚醒する。自分の家の屋根を見つめ、呆然としすぎていた……。

(どうかしたか? 周)
「いや、別に」

 返事をしながら、前髪を掻き上げるように額を押さえる。……ヌメリと、不快な触感が手の平に吸い付く。思わず手を見てみると、そこには大量の水滴。それが汗だと気付くのに、僅かばかり時間を要した。そしてその、僅かばかりの時間を要したという事実に、自分はまだちゃんと、意識が覚醒できていないということにも気付く。

 それに気付いたのを合図に、膝の力が抜けていく。息苦しくなる。酸素を求めるように呼吸が荒くなる。苦しさのあまり、知らぬ家の塀に全体重を預けたまま、ズルズルと、地面に座り込んでしまう。

(どうしたの?! 周お兄ちゃん!)

 そんな周の異常事態に、隣で退屈そうに立っていた美喜が驚きの声を上げ、肩を持って軽く体を揺さぶる。

「いや、ごめん。ちょっと、昔のことを思い出してて……」
(昔のこと?)
「うん。温かくも、冷たい我が家をね」

 今まで周の家のことは気になっていた。

 でも……ちょっと思い出しただけでここまで辛くなるのなら……聞きたくない。

 美喜はそう思い、そのまま無言で、周の背中を撫で続ける。自分のくだらない好奇心よりも、周の身体の方が大切だから。

 その間周にぃは、何もしない。……何も出来ない。

 

 いつもそう。ふとしたことで記憶が蘇り、立っているのも辛くなっている。

 身体面に障害を与えてしまうほど、辛い記憶。忘れてしまえと言っているのに何故か、ちょっとしたことで思い出されてしまう、俺の知らない、辛い記憶。

 その記憶によって与えられる、今のような身体障害の苦しみは、何故か俺にはこない。普通の痛みならば、五感が共有されている俺にも届くのに……。……と言うことはつまり、周のこの時の痛みは、精神面だけできているということ。

 それほどまでに、辛い記憶。

 それなのにこの俺が、何をしてやれる? 

 知らないからこそ、苦しいと知ってしまったこのことに、安っぽい言葉をかけてやれば良いのか? 大丈夫かと、安心しろと、安っぽい言葉をかけてやれば良いのか? ……俺ならゴメンだ。そんなのはまっぴらだ。知っているなら、安っぽい言葉でどうにか出来ない事も知っているだろうと、罵りたくなる。

 ……だからと言って、他にしてやれることが俺には思いつかない。

 だから俺は、何もしてやれない。

 

「もう大丈夫だよ。ありがとう、美喜ちゃん」

 周にぃが葛藤している間に呼吸が落ち着いたのか、汗を拭いていないほうの手で美喜の頭を撫でる周。そして膝に力を込め、塀にもたれ掛かりながらも立ち上がる。

「ごめん、周にぃ。迷惑かけた」

 周にぃは何も迷惑していない。それなのに彼は、倒れそうになったことで迷惑をかけたと思って謝る。謝る必要が無い――むしろ、何のフォローもしてこない周にぃを、責めてもおかしくない場面なのにだ。でもそれこそが周の優しさだと知っている周にぃは、自らの葛藤をぶちまけることも出来ず――

(……どうってことない。それよりもほら、先生が出てきたぞ)

 ――ぶっきらぼうに言葉を言い放つことしか出来ない。

 

 いっそ攻め立ててくれれば楽なのに……。

 

 そんな思いを孕ませながらも、周にぃが発した言葉通り、彩陽の家から先生が出てきた。

 入って十分にも満たない時間。周が苦しんでいた僅かばかりの時間。

 本当に荷物を届けに来ただけのようだ。……でもそれは同時に、先生すらが、彩陽に会うのを遠慮しているという証。

 彩陽の母親に見送られ、家から離れていく先生。ソレを見送りながら周は、自分の身体に異常がないかを確認する。

 

 ……大丈夫。額の冷や汗も止まったし、膝のグラつきも無い。息苦しさも全然大丈夫。

 

 異常が無いことを確認し終える頃には、先生の姿が視界には入っていなかった。そうして彩陽の家へと、歩みだす。

 と、心の中から声。

(おい、周)
「どうしたの? 周にぃ」
(……もう、大丈夫なのか? その、身体の方は……)
「ありがとう、大丈夫だよ。いつものことだ」
(そうか……その、何だ、いつも言ってることだが、話しても大丈夫になったらいつでも話してくれ。待ってるから)
「……うん、ありがとう」

 思い出すと辛い。

 だからこそ、話してもらえない。

 ソレを知ってる周にぃはいつも、思い出しても辛くなくなったら話してくれと、あの症状が起きた後に言う。

 でもそれは、周にぃの自己満足。……いや、本人が満足できていないので、その表現はおかしいのかもしれない。ただ、周にぃが考えた唯一出来ることといえば、辛くなくなった後でも良いので、その思いを共有してあげることだと思った。だからいつも、話してくれて大丈夫だと言う。

 その周にぃなりの優しさは、もちろん周にも伝わっている。

 

 しつこい、と思う人もいるかもしれない。でも僕は……いつも気にかけてもらえているこの優しさが、とっても心地良い。

 

 そう思っている周の気持ちが、何よりの証拠。

(それと、だ。伊沢彩陽のところについたら、俺は一言も喋らないからな)
「え? どうして?」
(あいつは、赤城周二という人間じゃなくて、周としての会話をいつも望んでるからだよ)
「そう? んまぁ、わかった」

 遠回しに「彩陽は周のことが好き」と伝えているようにも聞こえる言葉。でもそれじゃあ、周が気付けるわけが無い。もし気付けているのなら、とっくに両想いのラヴラヴカップルだ。

(ねぇ、周お兄ちゃん)

 と、今度は美喜が声をかけてくる。立ち上がってから手を繋いでいない彼女は、周と目線を合わせるように、浮きながら言葉をかけてくる。

「ん? どうかした?」
(その、ね。伊沢お姉ちゃんのこと、お願い)

 少ししか関わっていないのに、それでも彩陽が大切だと言わんばかりの言葉。ソレがとてもうれしくて――

「うん、わかった。まかせて」

 ――周は、力強く頷いて、返事をした。

 その返事を聞いただけで美喜は、彩陽の家に入ったら、言葉をかけないでおこうと思えた。

 

 だってわたしの言葉で、お兄ちゃんに迷惑かけちゃダメだもんね。

 

 そんなことを思いながら。

 

 

 

 目の前にある一軒家。小さな門扉を携え、隣にインターホン。小さい頃からよく遊びに来ていたせいか、約五ヶ月来ていない周にとっては、その外観がとても懐かしく思えた。

 そんな感傷に浸りながら、インターホンを押す。

「はい」

 受け応え口から、元気の無い女性の声。この声を聞くのも久しぶりなのだが、記憶にある声に比べれば元気が無い。

「赤城です。伊沢……ああ、その、お見舞いに来ました」

 いつも通りの彩陽の呼び方をして、この家の住人全員が“伊沢”だったことを思い出す。

「え?! ちょ、ちょっと待ってて」

 ドモった自分の声に返事をしてくれる、記憶にある、記憶通りの声。ソレが聞こえたかと思うと、すぐさま受話器を元に戻すような雑音。そして十秒にも満たない時間で、玄関口が開いた。

 そこには髪をアップに纏めた、OL風の女性がいた。目つきや雰囲気が彩陽と同じなこの女性こそ、三児の母にして彩陽のお母さん。多少老けているとは言え、三人も子供を産んだとは思えないほど若々しい。黒を基調としたスーツを着ているところを見ると、仕事先から帰ってきて間も無いのだろう。

「あら本当に周二君じゃない! 久しぶりね!」
「どうもおばさん、久しぶりです」

 実家を出てから一度も彩陽の家を訪れていないので、本当に久しぶりの再開。

 嬉しそうな顔で歓迎してくれるも、徐々にその表情が曇っていく。その曇りの原因が彩陽のことなのは明白だ。

「さっそくで申し訳ないんですが……伊沢の調子、どうですか?」

 このまま周から話を切り出さないままだと、表情の曇りは一層濃くなるし、何より彩陽の母親に気を遣わせてしまうことになる。だからあたかも、彩陽のことが気になっている、という思いが逸っているかのように振舞う。

「相変わらずね、周二君は」

 もっともその優しさを、彩陽の母親は気付いている。だからそんな、周本人には聞こえない程度の呟きが漏れる。

 だって我が子じゃない子供達の中では、一番付き合いが長い子供だから。

 そして彼女もまた、この優しさを受け入れてあげるのが、周のためだとわかっている。子供が内緒で料理を作ってくれている現場に遭遇しても、あえて知らないフリをしてあげる親のように。

「彩陽なら、自分の部屋にいるわ。場所は昔と変わらないから、上がっていって」
「え? その、良いんですか? さっき先生が訪れた時は、出てくるのがとても早かったんですけど……」
「あら、見てたの?」
「僕が来た時に偶然、入っていくのが見えまして」

 咄嗟にウソをつく

「そう。まぁ、出て行くのが早かったのは当然なのよ。あの先生、事情を説明をするだけして、彩陽がどういう状況か聞くだけ聞いて、早々に帰っていったもの。先生自身も会いたくなかったんでしょうけど、何よりあたしが会わせたくなかったの。……まぁ、そんなあたしの気持ちを察してくれたのかもしれないけど……」
「それじゃあ、その、僕も行くのをやめましょうか?」

 事情は聞きたいが、彩陽の母親が会わせたくないのなら無理強いは出来ない。それぐらいの常識はあるし、何より周本人が、彩陽の母親を全面的に信頼しているから。

「あら、むしろ周二君は無理矢理にでも会って行って欲しいな。担任の先生よりも、周二君の方が信用出来るし」

 その嬉しさが込み上げて来る、自分も全面的に信頼されていることがわかる言葉に――

「ありがとうございます。じゃあすいません、お邪魔します」

 ――と心からのお礼を返し、家に上がらしてもらって、目の前にある階段を上っていく。

「周二君」

 と、階段を上っていると、彩陽の母親から声を掛けられる。

 足を止めて振り返ると、彩陽の母親は、ドアを閉めた玄関先を見つめながら――周二に顔を見せないようにしながら、言葉を続ける。

「事情はさっき、先生から全部聞いたんだけど……でもあたしは、自分の子供のことを信じてるの。だから、お願い。彩陽を、助けてあげて」

 肩を震わせながらの懇願。

 自分じゃどうしたら良いのか分からない。自分の無力が愚かしい。そんな彼女の気持ちが、言葉から感じられた。

 だから周は、彩陽がどんな事情で帰って来たのかも知らないのに、どんな闇が彼女を包み纏っているのかわかっていないのに――

「任せてください」

 ――力強く、返事をした。

 無責任、と言われればそれまでもかもしれない。

 でも彼の返事は、何としても、自らを犠牲にしてでも、彩陽を助けるという、意思表示。

 何も知らないが、彼女を助けたいという気持ちは、何かを知っても変わらないという、意思表示。

 ソレはまさに、長年付き合ってきている彼女だからこそ分かる、意思表示。

「……ありがとう」

 階段を上がっていく、頼もしい背中。絶対助けるという意思を示してくれた、頼もしい背中。

 その背中に向かって彼女は、母親として最上級のお礼の言葉を、涙を流しながら、口にした。

 

 

 

 この家の最上階とも言える三階。ベランダと、一つの部屋しかない三階。

 その一つしかない部屋こそが、彩陽の部屋。そのドアを、ノックする。

「伊沢……僕だよ」

 返事は無い。でも、この部屋にいるのは確かだろう。まさかトイレに行っているということは無いと思う。……確かに絶対に無いとは言い切れないけど……とりあえず、もう一度ドアをノックする。いなければ入れば良いやと思いながら。
「伊沢……その、お見舞いに来たんだけど……入るよ?」
「ダメッ!」

 今度は部屋の中から返事があった。でもその声は、いつものような元気のある声じゃない。

 まるで、泣いて泣いて泣いて……疲れきってしまったような声。

「なんだ、いるんじゃん」
「……うん」
「入っちゃダメなの?」
「……うん」
「そっか……じゃあこのままで良いや」
「えっ……?」
「ドア越しでも良いよ。彩陽と会話出来るんならさ」

 そう言うと周は、ドアを背に預け、あぐらをかいて座り込む。

「……どうしてそこまで、あたしのことを気にかけてくれるの?」

 その声はまさに、すぐ後ろから聞こえた。

 ドア一枚を隔てただけの声。

 おそらく彩陽も、ドアを背に預けて座っている。

「どうしてもこうしても、僕は伊沢のことが好きだからだよ」
「またそんな……屈託無く言う」

 いつものように照れた反応はしない。そうするほどの元気も、彼女には残っていない。

「だって本当のことだもの」
「そう……ありがとう」

 抑揚の無い声。……たぶん彼女も、好きとか可愛いとか毎日言われるごとに動揺してはいるが、心の奥底では気付いているのだ。

 周の言う“好き”が、家族と同じ高さにある“好き”だということを。

 だからこんなにも、平然と返していられる。

 心が滅入り、他の事に気を回せないから――心の表層が全て剥がれてしまっているから、心底の想いだけしか見れていない。自分のこの恋心は片思いでしか無いという事実しか、見れていない。

 好かれたい、両想いになりたい、という表層が全て、剥がれ落ちてしまっているから……。

「ねぇ伊沢、昔僕とした約束、覚えてる?」
「……覚えてないよ」

 それは今までも、何度かしてきた質問。そして何度も聞いてきた解答。

 その一連の会話をして周は、いつも心が少しだけ沈む。何度しても変わらない沈み。

 だが構わないとばかりに言葉を続けるのも、変わらない。

「そっか……でも僕は、その約束の時に誓ったんだ。伊沢を守るって。守って護ってまもって、僕を助けてくれた伊沢に恩を返すんだって。……だから、話して。何があったのかを。呼び出された後に、何があったのかを」
「…………」

 返事は無い。でもその無言空間の支配中に、周はその約束のことを邂逅する。

 してしまう。

 

 

 

 それは例の日の出来事。家出をした日の出来事。

 車に乗せられ戻ってきた我が家。

 心配かけてごめんなさいと、一緒に探してくれてありがとうと、隣の家へ謝罪とお礼を言いに行った時の出来事。

 ……何度思い返しても、この時しかない。この日で一番、嬉しかった出来事は。この日まで生きてきた中で一番、嬉しかった出来事は。

 だって、マガイモノの喜びではなく、シンジツの喜びをくれた出来事だから。

 

 伊沢の家のインターホンを押し、両親が何言か喋る。

 その時の僕は、車の中での衝撃が激しくて、何も喋りたくなくて、何も聞きたくなかった。

 そんな時だった。

 玄関が開き、涙を流しながら、伊沢が走ってきた。そして、目の前にある門を押し開け、飛び掛るように僕に抱きついてきた。

 泣きながら、怒っているような言葉を浴びせながら、首元に手を回して、力強く抱きついてきた。当時は彩陽の方が身長が高かったので、容易に抱きつかれてしまったのを覚えている。

「どうして?! どうして出て行ったりするの?!」

 そんな、何の事情も知らない彼女らしい言葉。その言葉に僕は、何も答えることが出来なかった。……だって親に、“いらない子”の烙印を押された直後だったから。

 心が押しつぶされ、空洞が広がって、風が通りぬけるほど、空っぽだったから。

 だから、他にも何か言っていたはずなのに、聞いていない。

 だから、言われたこと全ての言葉に、返事をしていない。

「ねぇどうして?! どうしてなの?!」

 耳元で怒鳴られても、泣きながら怒鳴られても、僕は答えることが出来なかった。そもそも答えることが出来たとして、バカ正直に、親に愛されて無いと思ったから、と言って信じてくれたかどうか……あの親は、周囲の人を騙すのが、上手だったから。

 

 そうして抱きつかれながら、どれぐらいの時が過ぎただろうか。

 その間伊沢はずっと、無言で泣きながら抱きつき続けた。

 その間僕はずっと、無抵抗に無感情に抱きつかれ続けた。

 伊沢の家族も全員顔を出した頃、伊沢は泣いている顔をそのままに、僕を引き剥がし、両肩を力強く掴み、僕の目を見据えながら言った。

「じゃああたしが、周ちゃんをどこにもいかせない!」

 この言葉には度肝を抜かれた記憶がある。

 だって、僕の心の空洞が、少しだけ埋まったから。風を少しだけ、遮ってくれたから。

「ケッコンすれば、フウフになれば、周ちゃんはあたしからはなれられない! だからゼッタイ、大人になったらあたしと、ケッコンしよう!」

 それは子供の考え。結婚しても離れられるし、夫婦にならなくても一緒にいることは出来る。

 でも僕は事実、この言葉に救われた。

 だってこの言葉が無かったら、僕はその日にでも、心臓を包丁で貫いていたから。

 空洞の心を埋めるため、刃を突き入れていたから。

 この、僕のことを大切に思ってくれているという、心の隙間を埋めてくれる言葉が無かったら……。

 

 だから誓った。

 空っぽになり、泣くことが出来なくなった僕の心を埋め、また泣かせてくれるようにした彩陽を、涙を流しながら力強く抱きしめ、誓った。

 彼女を守ろうと。何があっても護ろうと。

 自分の存在を捨てた僕を大切だと言ってくれた、空っぽになった心を埋めてくれた彼女を、ありとあらゆるものからまもろうと誓った。

 それからだろうか。僕が彩陽のことを伊沢と呼ぶようになったのは。

 それは僕の中での、もう一つの心の誓い。

 彼女を守り、護り、まもりきって、自分の心を埋めてくれた彼女に恩返しが出来たら、あの時のように彩陽ちゃんと呼ぼうと。

 大切な彼女を、大切な自分で受け入れることが出来るようになったら、昔の呼び方に戻そうと。

 そんな、自分勝手な誓いを立てたのは。

 

 

 

「……今日、授業中に呼び出されたでしょ?」

 ドア越しの声で、邂逅をやめる。

 この温かな思い出だけは、思い出しても身体に障害は起きない。

 

 ……周は彩陽のことを、家族と同じ高さで愛している。でも……たぶんその対象は、姉や妹、ましてや母親などではない。

 自分を夫として据えた、妻へ向ける愛情。

 そういう意味での、家族と同じ高さの愛情。

 それは誰も気付いていない、向けられている彩陽当人ですら、ずっと一緒にいる周にぃですらが気付いていない、周の気持ち。

 周の過去を知り、気持ちを知り、誓いを知った者だけがわかる、周の気持ち。

「ああ」

 彩陽の言葉に短く言葉を返す。

 それは、今こそ誓いを果たす時だと、自分に言い聞かせるような強い言葉。

 

 その返事を聞いた彩陽は語りだす。

 この人なら大丈夫だろうと、その言葉を聞いて思えたから。

 

 

 

あとがき:
周の真実が語られる話ー
ある意味この文章一番の見所…だと思う。

家族と同じ高さの愛情については、金曜日の二話目で書いた出来事の答え

つまりはまぁ、周は心の奥底から彩陽のことを好きでいるということで
ただまぁ、親に愛情を教えられずに育ったが故に、一気に妻に向ける愛情のランクまで上昇してしまったという……

“恋愛”と言うものがスッポリと抜けてしまっているので、そうなってしまったんです
まぁ、“恋愛”を本能的に恐怖しているせいでもあるんですけどね……
どうして本能的に恐怖してしまったのかは、また後の話で語る予定
ただ今言えることは、周にとって“恋愛”とは憎むべき存在に近い、ってことだけですかね