「……つまり、今のあなたと昼のあなたは違う存在、と」
「そう言うこった」

 ビルを出て、冬子の疑問の中から最初に教えたこと。

 昼と夜の雰囲気の違い……つまり、周と周にぃの関係について、誰にも言わないことを約束に教えた。……んまぁ、信用できる人にしか教えないという周と周にぃ二人の約束だが、誰にも言わないという面だけで言えば、確かに冬子は信用できる存在だろう。

 疑問に思うことがあるのか、冬子は顎に軽く手を添えて考える仕草を作る。

「二重人格……二人して互いに会話ができ、互いに物事を見ることもでき、任意で入れ替わることもできる……信じられない」
「ま、信じる信じないはあんたの勝手だがな。誰にも言わないでくれよ?」
「二重人格とは、互いに会話が出来るもの?」
「ん〜……正直その辺は微妙なんだよなぁ……。だからまぁ正直な話、二重人格って言いきっていいものかどうかがわかんねぇんだけどな」
「それはあくまで、悪霊が憑依してる訳ではない?」
「……まぁな。もし憑依って形なら、俺が表に出てる時は周――あぁ、もう一人の意識はなくなるだろ?」

 内心の動揺を抑えながらの周にぃの言葉に、確かにと頷く冬子。

 

 憑依、と言うのは、霊体が取り憑くのとは訳が違う。

 取り憑きはあくまで取り憑き。一緒について回るだけ。言わば霊体にとっての移動手段・世間一般の守護霊などが取り憑きだ。

 対して憑依は、対象者の意識を乗っ取る。

 人の心の闇に、自分と言う霊体を滑り込ませ、そこから徐々に意識を乗っ取っていく。闇が大きければ大きいほど乗っ取る時間は短く、逆ならば乗っ取る時間は長くなる。またその性質上、乗っ取られていけばいくほど、ちょっとしたことにイライラしたり恐怖したりなど、負の感情が露になりやすくなる。

 そして最終的に乗っ取られてしまえば、本人の無意識下に体を動かされてしまう。それが憑依という手段。

 ……もっともこれは、ただの霊体には出来ない芸当。

 霊体が生まれる原因は生前の未練。ソレはある意味、人間にとって純粋な感情だ。そんな綺麗な存在が、人間の闇なんてものに自分を滑り込ませられる訳が無い。滑り込ませた瞬間、消滅してしまう。

 だから霊体ではなく、悪霊でなければ出来ない。憎しみと哀しみに支配された、あの存在で無いと出来ない。

 

 だからもし、周か周にぃが憑依した存在なら、どちらかが悪霊と言うことになる。周の優しさが悪霊の所業とは思えないし、周にぃが悪霊ならこんな無駄話なんてせずに再び襲い掛かってきているだろう。今の冬子は武器を構えていないのだから。

 そういうところを踏まえて、冬子は納得した。もちろんあの女の子の霊体が取り憑いたのは、赤城周二という体ではなく、周という人格なのだということも理解しているだろう。

 余談だが、冬子が周にぃを殺人鬼だと勘違いしたのは、赤城周二が悪霊に憑依されていると思ったからだったりする。

 冬子は納得出来たのか、考える仕草を解き、わかった、と言葉を続ける。

「それで、あなたの時は何と呼べば良い?」
「俺の時? ああ……普通に苗字で構わないぞ」
「それでは私が困る。赤城という苗字は、昼のあなたに使いたい」
「ん〜……周には“周にぃ”って呼ばれてるけど……」

 おそらくそれは“兄”という意味での“にぃ”だろう。周二の“二つ目の人格”というのも掛けてはいるかもしれんが……。

「わかった。ではあなたの時は、周二と呼ばせてもらう」
「ちょっ、下の名前直読みかよ!」
「何か不服?」
「いや、不服って言うか……」

 ただ単に恥ずかしいだけで……と思ってはいるが口には出来ない。

「ならば良い。それで周二、次にどうしてそんなに速く動けるのかの説明」
「さっさと話進めやがって……」
「何か言った?」
「いや、別に」

 ……まぁ、多少恥ずかしいが、すぐに馴れるだろう。

 とりあえずそう諦めることで、話を進めることにする周にぃ。

「この速さだけど、じつはあんたでも出来ることなんだ」
「藍島冬子」
「……は?」

 突然の自己紹介に戸惑い、思わず足を止め、斜め後ろを歩いている冬子の方へと首を向ける。

「私の名前は、藍島冬子」
「……ああ、知ってる」

 真っ直ぐな瞳で見つめられ、再び自己紹介。何が言いたいのかわからない周にぃは、気の抜けた返事しか出来なかった。だが彼女の続く言葉で、何が言いたかったのか理解する。

「知っているなら名前で呼んで欲しい。あんたと呼ばれるのはそんなに好きじゃない」
「ああ……なるほどね。わかったわかった。んじゃ、藍島――」
「苗字呼びは、朝のあなたがしている」
「……オイオイオイ……まさか……」

 嫌な予感がした。

「下の名前で呼んで欲しい」

 そして見事的中。

 一人片手で頭を押さえ、その言葉を受け止める周にぃ。

 とりあえず、一方的なら我慢できたが呼び合うとなると恥ずかしいので、そのことを率直に言ってみることにする。

「その、さ。下の名前で呼び合うのって、恥ずかしいじゃん?」
「どうして?」
「その、彼氏彼女みたいな関係に見られるだろ?」
「どうして? 別に下の名前で呼び合うだけでそう見られるとは、私は思えない」
「でも、仲良く見られることに変わりは無いだろ?」
「周囲がどう見ようと関係ない。ただ、互いに下の名前で呼び合った方が便利だと私は思う」
「それこそどうして?」
「純粋に聞き分けることが出来るから」
「だからって……その、あんたの下の名前――……」
「冬子」
「……――と、とりあえず、そうやって呼ぶのは馴れそうにない。俺を下の名前で呼ぶのは構わないからさ」
「さっき戦った時、私が勝った。しかも見逃してもあげている。その交換条件だと思えば、安いと思う」
「ちょ……マジか」

 さすがにこの言葉は予想外。言い返す言葉が思いつかなくなった。

 

 ……ま、負けたのは事実だし、そのことに関しては言い訳するつもりは無い。でもまさか……引き合いに出されるとはなぁ……。

 

 そう心の中で嘆くが、同時に腹を括る。覚悟と自らの負けを、一人心の中で認める。

 その意思表示と言わんばかりに周にぃは、押さえていた手を頭から退ける。

「わかったわかった、呼んでやるよ。その代わり、今度そのことを引き合いに出すなよ? これっきりだぞ?」
「わかった」

 その返事を聞いた周にぃは、再び前を向いて歩みを再開する。

「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………」

 

 ヤベェ! 呼べねぇ! 俺ってこんな純情少年だったのかっ?!

 

 思いもよらない自分の行動に、自分の中で組み立ててきた自分像を急速に書き換える。……いやそこは書き換えないよう抗う場所だろう。

「…………と、とう……こ」

 長い沈黙(書いてはいないが約五分)を破り、ようやく名前を口にした。

 ちなみにこの名前を呼ぶまでの間もカットさせてもらったがかなり長かった(約三分)。

 ……一度下の名前を呼ぶまで約八分って……しかもその間ずっと足が止まってるし。

「どうかした? 周二」

 

 よしっ! 言えたっ!

 

 冬子の返事を聞いた周にぃは、心の中で一人ガッツポーズをする。

「いやなに、やっと名前を呼べたと思ってな」
「そう。それで、結局何を話そうとしてたの?」
「……あ……あ〜っと……」

 ……話、進まないなぁ……。

 

 

 

 約五分。“冬子”と連呼することで何とか耐性をつけた周にぃは、ようやく話と歩みを進めた。……途中から“ことう”になってたことを今更説明する気はないので。

「私でも出すことが出来る? あの速さを?」
「そう。脳が筋肉に掛けている枷を外すだけの話だからな。……良いか? 例えば冬子が、高層ビルの五階から飛び降りたとする。そうなると、どうなる?」
「どうなるもなにも、もちろん両足骨折。悪ければ全身打撲の付加」
「その認識こそが筋肉への枷なんだよ」
「……どういう意味?」
「人間の筋肉ってのは実際、かなりの高さからの落下でも衝撃も吸収できるようになってんだよ。
骨もまた然り。そんなことで折れるほど脆くない。
なのに実際は、筋肉で衝撃が吸収されきれず、骨にまで衝撃が及んで折れてしまう。それはどうしてか? 
それこそ、さっきの認識なんだよ。子供の頃っていう純粋な時期から、親とかに教え込まれたり、実際に怪我をする人とかを見てきて、脳が“この高さからだと怪我をしてしまう”って筋肉と骨に枷をかけちまうんだ」
「それと速さに何の関係が?」
「ありまくりだろ。つまり、冬子が俺ほど速く動けないのは“これ以上速く動くことは出来ない”って脳が枷をかけてるからなんだ。
それこそ、さっきの高いとこから落ちた場合の話と同じで、小さい頃から教えられたりしてきたせいでな。
……子供の頃なんて、筋肉と骨がちゃんと形成されて無いから速く動けなくて当たり前なんだけどな。
それなのに、何度も何度も動かしてる内に、本人でも無意識の内に“自分はこれ以上速く動けない”って脳が決め込んちまう。要はそのせいってことだ」
「でもそれだと、私が“今よりも速く動ける”って思い込めば速く動けるってことになるけど……そんなことない」
「そりゃそうだ。子供の頃からずっと脳に刻み込まれてるようなもんだぞ? そんなもの、深い催眠状態になっても無理だって」

 いくら深い催眠状態に陥らせても、呼吸を止めさせることが出来ないのと同じ。それ程までに、脳に刻まれること。

「それじゃあ、どうやったら出せる?」
「そりゃもう、今までの年月脳に刻み込んできた枷だからな。同じ年月かけて枷を外していけばいけるってことじゃん」

 つまり約十六年、自分の体に向かって“自分は速く動ける”って念じ続けろということか……。それは無理と悟ったのか、冬子は諦めたようにため息をついて言葉を続ける。

「それじゃあどうして、周二はそんなことが出来ているの?」
「ん? なんでかなぁ……ま、いつの間にか出来るようになってた、ってことかな。もっとも俺だって、この原理は周に教えてもらったからなんだぜ」
「周……昼のあなた、赤城君のこと?」
「そ」
「どうして赤城君が知ってたの?」
「さあ……? 俺が速く動く姿を見て、どうしてか気になって霊体の友達に訊いたらさっきのを教えてくれたんだと」

 その言葉を聞いて、少しだけ考えるような素振りを見せたが(表情は相変わらず)、まあいい、と言って考えるのをやめた。

 ……ま、確かに、本人に訊ねることも出来ないのに考えても時間の無駄だ。そもそも彼女には、他にも気になることはある。

「それで、あなたのその流派は何?」
「俺の流派? ……ああ、それもまぁ、目的地に着いてからの方が説明しやすいかもな。それよりも、だ。俺ばっかり質問されるのも割に合わないし、俺から質問しても良いか?」
「……まあいい。答えられる範囲でなら答える」
「それじゃあまず最初、なんで巫女服のまんまなんだ?」
「可愛いから」
「は?」

 思いもよらない言葉に、反射的に足を止めて振り返り、冬子の顔を見つめてしまう。

「…………」
「…………」
「……どうかした?」
「ああ、いや、別に」

 たっぷり間を開けた後の冬子の言葉に、とりあえず誤魔化しにならない誤魔化しをし、視線を元に戻して歩みを再開する周にぃ。どうもさっきの言葉、冗談ではないらしい。

「もちろんそれだけではない。この服自体に清めの効果がある。だからもし、霊体が私に触れようものなら、ある程度の衝撃を与えることが出来る。もっともその衝撃とは、熱いシャワーを突然浴びせる程度」

 

 ……そっちが本来の理由じゃないのか?

 

 周にぃはそう思うも、特に訊き直すこともせず、場を仕切り直すように軽く咳をして話を進めることにする。

「それじゃあ次、何でこの事件を追ってるんだ?」
「お父様に頼まれたから」
「お父様に? そりゃまた何で?」
「今回の殺人鬼事件、悪霊が関与している可能性がある。それで警察直々に、悪霊退治として私達の家に白羽の矢がたった」
「ああ、ちょっと待った。さらに訊きたいことが増えたんだが、とりあえず何で、お前の家族は手伝わないんだ?」
「私は一人娘。お母様は嫁いで来たから霊感が無い。お父様は今日のお祭りの準備で忙しい。だから今は私一人。後片付けなどを終えた火曜日には、お父様も一緒に行動するつもり」
「なるほど、OKわかった。それじゃあ次、悪霊なんてもんを、警察は認めちまってるのか?」
「ええ。これまでも何度か、警察からの依頼で除霊を行ってきた」

 警察などの公的機関が、公に霊体や悪霊などのオカルト的なものを認めることは出来ない。……いや、もし認めたとしても、国民が納得しないだろう。だから悪霊が原因の事件が発生した場合、警察は何の対策も講じることが出来ない。

 そりゃある程度の組織はある。でも悪霊に対抗できるだけの組織となると、規模が大きくなりすぎて外部に漏れてしまう。

 だからあくまで小規模。だが小規模すぎて、今度はその組織だけえは悪霊を除霊することが出来ない。本末転倒気味なその組織が出来ることと言えば、事件の仕業が人間か悪霊かの分別だけ。

 だからこそ、そういう場合はそれぞれの町にある神社などに除霊――悪霊退治をお願いする。

「マジか……知らなかった……」
「社会には公にされていないことだから」

 周にぃの驚きによる呟きに、相変わらずの平坦声で追言してくれる冬子。

 ちなみに、殺人鬼について警察が公開していない情報の残りのうちの一つが「犯人は悪霊によるものだ」というもの。むしろ悪霊と思われる痕跡がいくつも残されているらしい。

 周にぃは理解できたのか、頷き、次の質問を口にする。

「それじゃあ次なんだが、冬子のその武器って……」
「この薙刀は清められているから、特に人体には影響を及ぼさない。あくまで霊体にダメージを与えるもの。もし人を斬りつけても、痛みしか与えることが出来ない」
「んじゃなくて、その、俺に投げつけたT字型の短剣だよ。突き刺さったところが、何かこう、強い力で押されるような感じがしたんだが……」
「あの短剣は存在自体が清められた武器。これも同じく人体に影響は無い。周二が言っている“強い力で押されている感じ”というのは、あの短剣を投げた場合にのみ発生する“拘束力場”の効果」
「拘束力場?」
「そう。あの短剣は本来、霊体を拘束するため、ないし、特殊な“陣”を描くために使う。
霊体を拘束するために、壁など他の何かと貫いた状態になるまで、投げた時の勢いが弱くならない。それが“拘束力場”の拘束。
もう一つの力場は、“陣”を描くために必要な地点に寸分の狂いもなく突き刺さるよう、空気摩擦などその他諸々のせいで投げた時の勢いを殺されないようにするための効果」
「……ああ、なるほど」

 なるほど、とは言っているものの、半分ぐらいは理解していなかった。

 まぁつまり、何かと貫き合うまで飛び続ける投剣用の短剣ってことか。

 その程度の認識しかしてなかった。……いや、出来なかった。と言うより正直な話、彼は真剣に話しを聞けていなかった。

 何故なら、真剣に聞くよりも、集中力がブレてしまうほど、気になることが出来てしまったから。

 ソレも訊ねてみようと周にぃは、足を止めずに視線だけを冬子に向けて口を開く。

「それじゃあ次の質問。……冬子、俺に何か説明するの不服か?」
「……どうして?」
「なんか、口調が事務的と言うか、何と言うか……もしかして俺が、お前の質問全部答えてないのに質問を始めたこと、怒ってる?」
「……どうして?」

 

 どうして……って訊かれると……なんでだろ?

 確かに、特に怒っている表情になっている訳でも、怒っている口調になっている訳でもない。いつも通り無表情だし、いつも通り淡々とした口調だ。

 雰囲気……と言う訳でもない。なのに……どうして怒ってるって思ったんだろう?

 

「……どうして?」

 急かすように、再び訊ねてくる冬子。その冬子の表情は、相変わらずの無表情。口調も相変わらず淡々としている。

 雰囲気は……少しだけ、答えを待ちわびているような感じがする。

 ソレを周にぃも感じ取ったのだろう。急いで答えようと、頭をフル回転させる。

「……な、何となく……?」

 でも結局、頭をフル回転させても結論が出なかった周にぃは、答えにもならない答えを返した。

 その答えを聞いた冬子は……何も変わっていない。いつも通り。

 ただどこか……周にぃには気付けない程の、微細な雰囲気の変化はあった。

 

 ……そう。確かに私は、少しだけ怒っていた。何に怒っていたのかは、自分でもわからない。

 でも、だからこそ、そんな意味不明な怒りを露にしたつもりは無い。

 それなのにこの人は……それに気付いた。

 原因を知っているか訊いたら知らないって答えたけど、気付いてくれただけだけど、それなのにちょっとだけ、うれしかった。

 

 そんな気持ちからの、微細な雰囲気の変化。

「ん、お、おぉ! 着いた着いた。ここだここ」

 自分の答えでさらに怒らせてしまった気になっている周にぃは、誤魔化すようにそう言うと、大きなシャッターの横にある、従業員用の鉄扉を開けに掛かる。

 そこは、大きな倉庫。外観だけを見れば、トラック二台をあっさりと飲み込みそうな大きさ。

 こんな場所で一体……。

「そら、開いたぞ」

 倉庫を見上げていた冬子に声が掛かる。視線を下げてみると、扉を開け、中へ入るよう促してくる周にぃ。

 本当に入って大丈夫なのか……。いきなり襲われないだろうか……。など、不安要素は多々あるものの、どうも彼女が入らないと入るつもりが無いらしい周にぃは、ずっと扉を開けて待ち続けるのみ。

 冬子は、腰の裏に折り畳んで収納してある薙刀をすぐさま取り出せるよう、手を回してそこへ入っていく。

 

 入ってまず目に入ったのは、目の前にある景色。……そう、景色。本来壁があるべき場所、そこに壁がまったくなかった。つまり、外が丸見え。

 上を見上げてみると、その壁の無い場所から半分の天井が朽ち果てており、重力に負けて地面と同化している。おかげで月明かりが無遠慮に降り注ぐものだから、脳内で予測していたよりかは、この空間は幾分も明るい。

 むしろこの無遠慮に降り注ぐ月明かりでのみ支配されている空間は、見た目のボロさや地面のゴミ共の存在を忘れさせ、神秘的な雰囲気すら醸し出していた。

 目の前の月明かりのみの明るさ、立っている場所の暗さ。

 まるで、光と闇を閉じ込めたような部屋。

 

 ……壁一面がない部屋。……いや、四方に囲まれてこそ部屋だと言うのなら、目の前の壁が無くなっている時点で、ここはもう部屋じゃない。……じゃあ、何だろう? 廃墟……だろうか?

 

 だが率直に、愚直に廃墟と呼ぶのは失礼に感じる、そんな神秘さがこの部屋にはあった。

「ようこそ。俺の部屋へ」

 

 

 

あとがき:
周にぃと冬子が微妙に仲良くなっちゃう話ー
一時冬子が怒ってしまった理由は読者様の想像にお任せします

今回はちょっと中途半端なところで終えちゃったかなぁ〜……とちょっと後悔
でもこのまま進めたらもう二日目が終わっちゃう
しかもかなりの長文で

ってな訳で、中途半端に区切らせてもらいました
それで後悔してたら話にならないって……

と言うよりそれよりも
文字が多くなりすぎて読み難い箇所が多すぎたね……