――なんて、させる訳にはいかない……!
立ち上がれない彼女の左手側。その壁から突如、爆音が響いた。
次いで、何かが崩れ落ちるような音。
まるで外から中に向かって、壁に大きな穴が開けられたような……。
思わず、自らへと男と刃が迫ってきているのも忘れ、その音がした方向へと視線を向ける。
が、本当に壁に穴が開けられているのを確認するよりも速く、明かりが射し込んでいることを確認するよりも速く、この廃ビルの中へと飛び込んでくる人影……!
そしてその人影は瞬く間に彼女と男の間にある空間に何か大きなものを侵入させ、勢いよく振り上げてみせた!
それだけで、駆けた勢いを乗せて振り下ろしていた男の妄想付具が、受け止められる。
次いで、そのあまりにも予想外な妨害のせいで不意を衝かれた男は、満足に力を込めていなかったのか、その手の中にあった妄想付具を弾き飛ばされてしまう。ヒュンヒュンと、まるで風車のように上空を舞ったその剣は、男の遥か後方に突き刺さる。
そのあまりにも突然な展開に、男本人が驚愕を露にする。が、勝利を確信して駆けていた男の勢いは、武器を手放しても尚止まらない。
無様に“たたら”を踏むその姿に向かって侵入者は、振り上げていたその“何か大きなもの”の腹で、その憎たらしい顔を思いっきり殴りつけた!
「へぶっ!」
奇妙な声を上げ、男は弧を描きながら大きく後ろに吹き飛ぶ。
これで何とか、麻枝との距離を開けることには成功した。
「……えっ?」
その声は展開についてこれないからか、それともあまりにも有り得ない状況に驚いているからか。助けられた麻枝自身もまた、彼女らしくない呆気にとられた声を上げる。
そしてその声が、“オレ”の耳にも届く。
……呆然と見上げているその視界に映るオレの背中。
視覚共有で見えるその映像を脳裏に映しながらも、オレは彼女へと僅かに視線を向け――
「待たせたな」
――力強く、彼女を安心させるために言葉をかける。
「…………」
呆然とオレを見上げる瞳。そこには自分がピンチだったにも関わらず、我関せずないつも通りの無機質な瞳をこちらに向けている麻枝がいる。
「っ……!」
……そう、思っていた。
……確かに、瞳は向けていた。ただ向けていたのが、いつも通りの無機質な瞳じゃなかった。
彼女は……泣いていた。
……いや、泣きそうな顔をしていた。今にも涙を流しそうなのに、必死で堪えている顔をしていた。
オレのことを非難する時も、注意する時も、何時如何なる時も無表情で、でもつい最近ちょっとした微笑みを向けてくれた麻枝。……そんな彼女が、泣きそうになってる。涙を流しそうになってる。
いつもいつも、表情筋を動かさず淡々とした口調で話しかけてくる麻枝。だからオレは勝手に、いつも通りの無表情で戦っていると思っていた。
でも実際は、こんな、今にも涙を流しそうな、見てるこっちが悲しくなる顔になって、それでも泣かずに強がって、戦っていた。
……恐怖で潤み、安心で潤んだその瞳。ソレを見ていると、今までそのことに気付かなかった自分とか、こんな表情を作ることになった要因とか、色々な対象に向かって、様々な気持ちと複雑な思いが交錯する。
……“強がっていた”。
視覚共有で見ていた彼女が普通の態度でいれていたのは、まさにその一言に尽きる。
あまりにも、いつも通りな無表情。
あまりにも、変わりの無い無感情な言葉。
彼女と会うほとんどがそうだったせいで忘れてしまっていたが、彼女はあくまで女の子なんだ。
……それなのに、同姓のオレでも気持ち悪いと思うその言動全てを、視覚共有越しではなく直に見聞きしてきたのだ、彼女は。
本当にやろうとしていることが伝わる、犯され、蹂躙されるかもしれないという、恐怖が沸き立ってくる、その全てを。
今の彼女はもう、さっきまでの気丈な彼女ではない。
あまりの恐怖で泣き出しそうになっている、でも小柄な身体を震わせてまで堪えているだけの、ただの普通な女の子だ。
「……護ってやる」
だからオレは、どんな思いが交錯しようとも、その全ての思いに共通するその感情を、言葉に出す。
「絶対に護ってやる。お前をこれ以上、悲しませない」
壁を破壊するために妄想能力で生み出した、身の丈以上の長さを誇り、肩幅ほどの刃幅をした大剣。
その長さも大きさも、オレの腕力では到底持ち上げることすら叶わないように見えるソレを、彼女をこんなにした要因を睨みつけながら、肩に担ぎ上げるように持ち上げて構える。
……具現化した武器を巧みに扱える妄想能力がある以上、本来なら持ち上げることが叶わない大きさをしていようとも、持ち上げて振るうことが可能になる。……が、さすがに大きすぎたか……。
……いやでも、コンクリートで出来た壁を破壊するためには、これぐらいの重さと大きさは必要だった。建物の壁の破壊だなんて、質量と遠心力に全て任せる方法しかオレには思いつかなかったし。
「どうして……」
「ん?」
気持ち悪い男――白沢に注意を向けながら、座り込んだままの彼女に僅かに視線を向ける。
「どうして、あなたがここに?」
頬を少しだけ赤く染め、そんな疑問を投げかけてくる。
……ああ、そっか。あんな恥ずかしいセリフで助けに来られた上に、泣きそうな顔まで見られてんだ。
彼女の性格を考えるに「半泣き状態を見られた上に、聞いてるだけで恥ずかしいセリフで助けられた」のが恥ずかしいのだろう。そりゃ顔も赤くなる。……オレ的にはカッコイイと思ったんだがな……。
「ああ、それはな――」
その疑問に答えようとした刹那、オレの開けた穴から走って中に入ってくる男子生徒!
視界の端に映ったその姿は、リーゼントをキッチリとキめ、赤い鱗で覆われたその拳を振り上げ、オレに殴り掛かるための最後の一歩を踏み込もうとしている道久の姿……!
「――ちっ……! 麻枝、後で説明してやる! 今はあそこに向かって走って逃げろっ!」
部屋の隅に見える昇り階段の場所を視線だけで示しつつ、最後の一歩を踏み込んで放ってきたその拳打を、持ち上げた大剣を地面に深々と突き刺し、その刃の腹で何とか受け止めてみせる!
だがこれだけでは、さっきと同じで剣が折れるのは必至! それほどまでの威力があの状態の腕にはある! なら反対側から――オレの方から剣を挟み込むようにして、刃の腹にショルダータックルをくらわせるように剣を支えれば……あるいはっ!
「っ……!」
もっとも、これだけ必死になっていたのはオレだけのようで、剣を支えながら見えた奴の視線はこちらへとまったく向けられていない。そのことに若干の苛立ちを覚えたが、奴の視線がどこを向いているのか分かった瞬間、苛立ちが霧散した。
そもそも顔自体が横を向いていて、この鍔競り合いのような状況自体に集中していない。
なら彼はどこを向いているのか……? ……そんなもの、彼の視線を追わなくても分かる。
「急げ! 麻枝っ!」
立ち上がり、フラフラとした足取りでオレの示した階段へと歩き出していた彼女。顔の向きから考えるに、そちらへと視線を向けていることに違いはない……!
にしても、麻枝の動きが遅い。
走ることも叶わないのか、急ごうとしている意思は伝わるのに、足がどうもフラフラとしている。……やはり、心から恐怖してしまったのが堪えているのだろうか。
いつも無表情な彼女が、泣きそうな顔になっていた。と言うことは、心から恐怖してしまったとしか考えられない。
座り込み、無駄だと気付いているのにがむしゃらに光弾を放っていたのは、そうしないと本当に泣き出してしまっていたからとしか考えられない。
ふと、そういう目に遭わせた白沢のことが気になり、奴の方へと視線を向ける。
すると奴はあろうことか、フラフラと階段へと向かっている麻枝の元へと妄想付具片手に駆け出していた!
「させるかよっ!」
瞬間、姿勢を低くし、盾にしていた大剣を包帯に戻す。
麻枝を急かしたオレの声にすら反応出来ないほど麻枝へと意識が集中していた道久は、突然の抵抗の消失に反応することが出来ず、ガクン、と体勢を大きく崩す。
だがソレに追撃することもせず、彼を無視し、姿勢を低くしたまま全力でっ、白沢に向かって駆け出す!
……が、このペースだと向こうの方が麻枝の元へと辿り着くのが刀一振り分速いか……!
……なら! 奴が麻枝の元に辿り着くよりもさらに速く、走りながら右腕を下げ、戻した包帯を手首に巻きつけ、奴との距離はあろう長い鎌を具現化し、奴の足を止められるタイミングで鎌を侵入させっ、一気に奴の顔面目掛けて振り上げるっ!
「ぐっ!」
その生えてくるように現れた鎌の刃に驚き、白沢は思わず足を止めてしまう。振り上げた刃が当たりこそしなかったが、当初の目的である足止めは成功した!
が、それに対して喜ぶよりも早く、例の背中の中心から蟲が広がるようなイヤな予感。
慌てながらも冷静に、走りながら後ろを振り向く。
するとそこには、燃え尽きたような白の鱗を右腕に纏った道久を追い抜き、こちらへと駆けて来る傘のような鉄槌を持った男!
くそっ……! 奴も建物内へと入って来たか……っ!
「ちぃっ……!」
厄介なことになってきたことを嘆きそうになりながらも、大きく前に跳びつつ後ろ――鉄槌を持った男へと振り返り、武器を包帯に戻し、すぐさま腕の長さほどの両刃の剣に姿を変えさせる。
そして慣性で流れる身体を足に地をつけることで殺し、小さく前に跳びながら武器を突き出してくる男の攻撃と対峙する!
「はっ! せやっ! おりゃっ!」
掛け声を上げながらの三度に及ぶ連撃を、数歩後ろに下がりながら全て受け流し、向こうが着地すると同時にこちらは剣を振り上げて男に斬りかかる!
が、やはり見た目に反して向こうの腕力が上なのか、一度受け止めた後にあっさりと下に流されてしまう。
「ふっ!」
そのまま流れるような動きで、下に向けた武器をオレの顔目掛けて振り上げてくる!
だがそれを大人しく食らってやることも出来ないため、一歩後ろに下がりつつ、躯を右回転。
「はぁっ!」
そのままの勢いを乗せた斬撃を低い角度から首元狙って放つ!
その攻撃はさすがに受け流せなかったのか、ギイィィ……ン! と重い音を響かせて身体の横で受け止めてくる。
後は力比べ……な状況になるとほぼ同時、オレは再び武器を包帯に戻した。
「っ!」
突然の力の消失に体勢を崩す男。
その腹に蹴りを食らわせさらによろめかせ、後ろを振り向き、同じ両刃の剣を具現化して急いで“麻枝へと再び向かっていた白沢の元へと駆け出す”。
……躯を回転させた時に視界に映った。
奴が再び麻枝の元へと駆け出している、その姿が。
さすがに一度足を止めさせた程度じゃあ奴は止まらなかった。本来なら三対一に持ち込める状態だから、確実にオレを狙ってくると思っていたが……どうも奴は、チームの勝利よりも自分の欲求を満たすのが優先順位らしい。
……奴の欲求に対して苛立ちを覚えているからか、妙に頭の中がスッキリとしている。
奴を麻枝の元へと絶対に近付けさせない。
そのことしか考えられない程、苛立っているから。
「麻枝にはもう近付かせねぇっつってるだろうがっ!」
オレの口から思わず吼えが出ようとも、白沢はまったく意に介さない。
だがオレもそんなことを気にせず、男の進路を妨害するように刃を差し込み横斬りを放つ!
「ちっ!」
舌打ちをかましつつ、後ろに大きく跳んで避ける白沢。相変わらず見た目に反して身軽な男だ。
「さっきから邪魔してんじゃねぇぞ!」
白沢が自分勝手なことを吼えながら妄想付具を振り上げる。
「邪魔してんのはテメェだろうがよぉっ!」
その姿に吼え返しつつ、隙の少ない刺突を放つ!
「ぐっ!」
振り上げた妄想付具を手首だけ返して刃を下に向け、その刺突を受け止める。
そして手首だけの力でこちらの攻撃を弾き返す。……内面の醜さに反し、やはり実力はかなりのものだ。
「はぁっ!」
だがそれに負けることなく、続けざまに三つの斬撃と刺突。
「ちっ……!」
あっさりとその連撃は受け止められるが、四撃目にして躯を回転させ、遠心力を込めた上に両手で武器を握った最大威力の横斬りを放つっ!
「っ!」
麻枝を追いかけることばかり考えていた男に、その突然の躯の回転に反応することが出来るはずもなく、そうなれば必然その攻撃を止めることが出来た唯一の瞬間を失ったことを意味し、男は大人しくその攻撃を後ろに跳びながら防御するしかなくなっていた。
もし留まってでも受け止めようものなら、男にさらなる隙が生まれてしまい、その隙を衝かれて男はやられてしまっていた。さすがにその辺は理解していたようだ。
そしてそうこうしている間に、麻枝はようやくその階段へ辿り着き、タンタンと軽快な音を立てながら上の階へと上がっていく。
オレはソレを護るために、その階段に背を向けて三人と対峙する。……麻枝の足音が軽いな……少しずつだけど回復してきたか……?
「き、貴様〜〜〜っ!」
「おい幹也、あの女はどういうことだ?」
「どういうことも何も、外の女は偽者だったんっすよ」
白沢一人が怒りで身体を震わせている傍ら、蒼の鱗を右腕に纏った道久と、傘のような形状をした鉄槌を持った男――どうやら幹也という名らしい男は、オレがここに突入する前に蒼莉さんと行った作戦についての種を見つけようとしているようだった。
「偽者?」
「うん。アイツを追いかけて道久が中に入った後、僕も道久の後ろに現れた女に攻撃を仕掛けたんっすよ。そしたらどうしてか攻撃が当たらなくて、疑問に思ったところでフッ……と」
「消えた、ってのか?」
「うん。まるで煙を掻き消したみたいだったっすよ」
「なるほど……もしかしたら幻覚か何かかもしれんな」
道久……中々良い読みをしている。
「幻覚、っすか?」
「ああ。おそらくは、作戦前に見た映像で妄想能力を使っておらず、しかもこの争奪戦でもいまだ何も使っていない――いや、“使っていなかった”、もう一人の女のだろう」
「でもあの女は、共闘チームの射撃でこっち側と分断されたんじゃ……」
「いや、共闘チームのリーダーから連絡があったんだが、どうもアイツは相手のチームリーダーと思われる男を狙うためにあの位置から動いたらしい。もしかしたらその死角をついてこちら側に来ているのかもしれん……」
「ちっ……それは厄介っすね」
……ホント、良い読みをしてやがる。違うところと言えば蒼莉さんがこちら側に合流しているというところだけか。
そう……今こうして、二人に挟み込まれた状態から脱していれてるのは、単(ひとえ)に蒼莉さんの妄想能力のおかげ。
彼女の、幻覚を生み出す妄想能力のおかげ。
目の焦点の合う好きなところに幻覚を生み出し、幻覚と意識されない限り問答無用で他人にその幻覚を見せつけ続ける。
それが蒼莉さんの妄想能力の全容らしく、瓦礫の下で教えてもらった彼女の作戦とは、その妄想能力を最大限用いたもの。
瓦礫の下、土煙が舞う中から勢いよくオレが飛び出し、驚きながらも構えを取る二人の内の一人――道久の背後にその幻覚を生み出す。
本来なら建物の中にいるはずの麻枝の幻覚を。
その突然の姿に二人が動揺を深める中、オレは自らの妄想能力で壁を破壊。幻覚じゃない麻枝の救出をする。
それが、作戦の全容。
だから彼女は向こう側から隠れてこちらを見、遥かに遠いこちら側に幻覚を生み出していたに過ぎず、オレ達とはまったく合流していない。……もっとも、その勘違いを訂正してやる気はまったく無いが。
「ホント、共闘関係で戦うのが有利になるにしても、肝心の共闘チームとの連絡手段がリーダー同士の脳内会話だけになるってのは面倒っすね」
何かオレにとって初耳なことをボヤきながら、傘の形をした鉄槌を構える幹也。
「そう言うな。それだけの代償で、相手よりも人数が上になって戦うことが出来るのだからな」
答えながら、道久もまた自らの腕の内側に伸びる棒を握り、肩の方へと引き寄せる。
そして手を離すと同時、棒は元の位置に勢いよく戻り、瞬間、蒼い鱗が赤く輝きだした。それはまるで、ライフル銃のボルト・アクションを思わせる。
……ようやくだ……ようやく、紅先輩の作戦通りにコトを運べた。
オレがあの人に頼まれた作戦の重要な役割……それは、麻枝を護りきること。本当の作戦の要である彼女を、自らの命を賭して護ること。失ってはいけない作戦の要を護ること。
……作戦説明の時感じた「重要な囮役」という思いは、あながち間違いではなかったようだ。
だから……後はそう、後ろの階段を、誰にも昇らせないだけ。
麻枝の元へと、誰も行かせないだけ。
階段を背にして立つオレを半円に囲んだこの三人の足を、止め続けるだけ。
「……なぁるほどぉ」
ふと、右手側の遠くに立っていた白沢が、ニタリとした笑みを浮かべる。
今まで静かだっただけに、その声がイヤに不気味に聞こえ――ん?
今まで静かだった? 前に立つ幹也と道久は、喋ってこちらの作戦を明かそうとしてたのに……?
「つまりさぁ、この一年坊を倒したら、あの子をまた追いかけられるんだねえぇ……!」
ゾクリと、思わず背筋が寒くなるほどの気持ち悪い笑み。
……いや、違う! これは、この感覚はっ、この後に何か起きる時に感じる、あの蟲が這い広がるような寒気……っ!
「くっ……!」
瞬間、視界の端から鉄槌が飛んでくる映像。
慌てて身体を動かして避け――ようとして、白沢から距離をとる方向へと逃げれば、問答無用で貫かれる速度で妄想付具が投げつけられている……!
だからと言って上に跳べば、大きく跳んでこちらへと落ちてきている道久に殴り飛ばされるっ……!
ならば前へ――と思えば、そちらからはやはり白沢が全力で駆け出してきていて……っ!
くそっ……なんて完璧に包囲された攻撃郡だ……! こんなのを示し合わさずに放てるなんて……。
……いや、違う……! こいつらはちゃんと、この攻撃を示し合わせてた……!
そう……さっき抱いた疑問。アレはどうして同じチームなのに脳内会話で作戦を立てないのかと思ったからなんだ……!
だって口に出してあんな話をすれば、こちらに聞こえ、全てがバレてしまう! それなのにそんなことをしたのは……脳内会話をしていることを、オレに悟らせないため……!
無言で佇んでいては、脳内会話をしているのが明白になってしまうからこその、囮の会話……!
視覚共有で紅先輩と蒼莉さんが行っていたのを見たが、こいつらも同じことをしてたのか……!
「くっそ……っがぁっ!」
気付けなかった自分への怒りを吐き出しつつ、迫る攻撃の中、すぐさま精神を統一させる……!
……こんなもの……防げずしてっ、麻枝を護ってなんてやれるかってんだっ!